吸血鬼と紅き石
どこかあの青年には警戒心を解くような力があるのだろうか?

考えてみるけれども良く分からない。

(分からない、けど)

もし青年が帰って来たら、少しだけで良いから外出させて欲しいと頼んでみよう。

父の遺体をあのままにしたくない。

父が死んだ、という事実を受け入れてようやく落ち着いた今、そう思う。

無残な姿にされてしまった父をまた前にするのは辛いし怖いけれど、遺体を清めて埋葬して――安らかな眠りにつかせてあげたいのだ。

でもまずは。

飲み終わった紅茶のカップをソーサーに戻して軽く腕捲り。

(あたしはやるべき事をやらなくちゃ!)


< 36 / 263 >

この作品をシェア

pagetop