吸血鬼と紅き石
青年が帰って来たのはそれより数刻後。

城を探検がてら部屋の場所を覚えたり掃除をしたりと、軽く一通り終えたリイエンが一息吐いた頃だった。

「これに着替えろ」

バサリと置かれたのは黒いワンピース。

「…こ、れ?」

仕立ての良い、上品そうなそれをリイエンは眺めた。

「俺達には良く分からんが…お前達人間は、喪に服す時は黒色のモンを着るんだろう?」

だから着ろと顎で示されて、リイエンは困惑する。

“喪に服す”というのは父を喪ったから分かるが…着替える意味が良く分からない。

「あァ…オルフェルトの墓参り、とやらに行くぞ」

そんなリイエンを見て、自分が一番肝心な事を言い忘れていた事に気付いたのだろう、レンバルトが口を開いた。
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