吸血鬼と紅き石
吸血鬼のまま暮らす方が、きっと楽だったろうに。

愛し合った女性と生きる為、人として暮らすことを選択した、父。

そこに、どれ程の想いがあったろう。

愛する人を亡くしてから、禁忌と呼ばれる自分を慈しみ、育ててくれた。

そこに、どれ程の愛があったろう。

苦労も困惑もあっただろうに。

そう想像すればする程、感謝の言葉しか浮かばない。

ゆっくりと目を開けて、しっかりと父の墓を見つめる。

(しっかりしなくちゃ)

守ってくれていた父がいなくなった今、一人で生きて行かなくてはならない。

今はこうしてレンバルトがいてくれるが、それも何時までかは分からない。

(本当に、しっかりしなくちゃ)

呪文のように唱えながら、リイエンはゆっくりと立ち上がった。


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