吸血鬼と紅き石
うっかりしていたが、吸血鬼である“彼”は人の血、“精”を糧とするのだ。

人のように食物を口にしたりしなくてもおかしくはない。

父は一緒に食事を摂ってくれていたが、あれは人として暮らしていたからで、青年の反応を見る限りきっと“食べ”たりはしないのだろう。

「何でも食うから遠慮はいらねェ。…お前の作る食事、楽しみに待たせて貰うさ」

リイエンが変な事を言ってしまったと発言を撤回する前にレンバルトが口を開く。

「じゃあ、用意が出来たら呼んでくれ」

目を丸くするリイエンの頭をポン、と撫でてレンバルトはそう言い置くと、部屋を後にする。

その背中を見送って、優しいその気遣いにリイエンは一人、その唇を緩ませた。

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