吸血鬼と紅き石
(どうして、私をここに置いてくれるんだろう)

父の子だから?

身寄りがなく、狙われているから?

それとも…これは勝手に感じている事でしかないのだが、好きだった母の遺した娘だからだろうか?

色々と思いを巡らせてみるが、やはり良く分からない。

もう一度、レンバルトの寝顔に視線を向ける。

整った眉に、普段は意志の強さを物語る宝玉の瞳は、今はその姿を目蓋に隠され。

薄めなのにどこか肉厚な唇は、思わず感嘆の溜め息を吐いてしまう程艶を持ち、中心には均一を壊さぬように通った鼻筋。

優美に線を描かれた輪郭。

総てが美しいのはやはり、神が細心の注意を払ってノミを振るったせいなのか。

見とれて溜め息を吐いてしまう程完璧な美の化身。

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