吸血鬼と紅き石
普段の姿もそうだが、眠っているその姿さえ美しいと、そう感じてしまうのは、やはり神の成せる業としか思えない。

彼の美を讃える褒め言葉など、泉から湧き出る水のように次から次へと溢れ出して来そうだ。

リイエンは自身が一度、“神が創った至高の人形”だと称したことのある美貌に見惚れていたが、折角作った食事が冷めてしまう。

まだ眠っている彼を起こそうと、リイエンは手を伸ばした。

――グイッ。

いきなり伸ばした手を掴まれたと思ったら。

瞬きをする間もなく、リイエンはその身を青年が座っていた椅子の傍にあった、小さなテーブルに抑え付けられていた。

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