吸血鬼と紅き石
「…立てるか?」

そう差し伸べられた手に、恐怖を覚えたばかりの身体が震える。

「……悪かった」

謝罪の言葉と共に、目の前の手が耐えるようにキツく拳握られるのに気付いてリイエンは顔を上げる。

彼が立ち上がる動きに紛れ、一瞬だけリイエンの瞳に映ったのは、今まで見た事のないどこか寂しさを感じさせるレンバルトの、表情。

「―――っ」

リイエンが新たに声を掛けるよりも早く、何も語らないレンバルトのその背中が消えるようにリイエン一人を部屋に残し、扉を後にした。

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