吸血鬼と紅き石
動けない、何を呼び掛けたら良いのか分からない。

部屋を出て行く青年の背中をリイエンはただ見つめていた。

未だ震える手をキツく握り込むことで抑える。

あんなレンバルトは初めて見た。

彼を語れる程知っている訳ではないが、ここに来て共に過ごした2日間では初めて見た表情だった。

(彼が吸血鬼だ、って事は分かってた筈じゃない)

更にキツく手を握り込み、リイエンは己を叱咤する。

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