吸血鬼と紅き石
自分の言葉に目を丸くしている青年に、更に口を開いて。

「大体ねぇ、あなたも一端の吸血鬼ならあたしの気配くらい、覚えて欲しいものだわ!あたしは人間なのよ!」

自分の剣幕に驚きを通り越し、寧ろポカンと自分を見ているレンバルトの表情を見て、リイエンは今度はひとつ、息を吐き出して。

「吸血鬼は、怖いわ。だけどあなたは他の吸血鬼と違う、って分かってた筈なのにあんなに怖がったのは悪いと思ってるの」

脳裏に浮かんだ、目の前の青年の寂しげな表情に唇を舌で軽く濡らして。
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