吸血鬼と紅き石
それから少しの間、時は穏やかに流れて。

本当にゆったりと、リイエンはレンバルトと一緒に居る事に慣れて行った。

レンバルトは、不思議な男だ。

吸血鬼の癖に、一緒に居ると安心する。

初めて会ったのは少し前の筈なのに、いつの間にか今までずっと一緒に居たような、そんな不思議な錯覚を起こさせる。

城の掃除を一段落させ、自分で淹れた紅茶で一息つきながらリイエンはレンバルトの事を考える。

銀とも見紛う灰色の髪。

神が創ったような、その美貌。

スラリと、憎たらしいまでに長い手足。

その身を包む、彼が吸血鬼だと示す黒のマント。

そして、あの意志の強さをそのまま現すような、煌めく宝玉の瞳。

見た目は極上の、本当に極上の青年。

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