吸血鬼と紅き石
リイエンの、苦手な目だ。

自分にこんな、優しい表情を向けられたら、困る。

非常時でもないのに心臓がやたらと騒いで落ち着かないのだ。

――グイ。

そんなリイエンの困惑の声を悟ったのか、その意識をレンバルト以外に向けさせたのは彼女の背後の子供だった。

「…ターニャ」

リイエンが彼女の名を呼ぶ。

ぎゅっ。

その腰に抱き付いて、彼女から離れないとの意思表示だろうか。

リイエンはその癖っ毛を安心させるように優しく撫でてやり。

レンバルトは厄介事が増えたとばかりに溜め息を零した。

< 68 / 263 >

この作品をシェア

pagetop