吸血鬼と紅き石
「年の割にしっかりしてンのは良い事だ」

だがな、とレンバルトが続ける。

「ここにいるのはお前だけじゃない。折角隣に俺、っていう寄り掛かり甲斐のある奴がいるんだ…強がって折れちまう前に寄っ掛かって来い」

レンバルトの声が、低く響く。

その顔を呆然とリイエンは見つめる。

甘えても良いのだと。

頼っても良いのだと彼は言うのだ。

父の知り合い、という以外に素性の知れない吸血鬼。

だがこの彼の居城で過ごす内に、少しずつ色々な面を見て。

知らない間に惹かれて来た吸血鬼。

その彼が、己に寄り掛かっても良いのだと自分に告げる。

それは、どこかで待ち望んでいた言葉。

どこかで求めていた言葉。

「…レ、ンバルト…」

優しい顔が涙で滲む。

一度零れてしまった涙は後から後から滴になって滑り落ちる。

それを暖かな優しい指が拭った瞬間。

リイエンは声を上げて泣き出しながら、青年の胸の中へと飛び込んだ。



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