風とウルフと忘れた過去
昼間の暑さが嘘のように涼しい夜だった。

俺の隣には小柳さんが歩いている。

虫の鳴き声がする。
秋を思わせる声の中に話し声が響く。

今思うと何の話をしていたかはわからない。でも今日出逢えて、そして側に居れたことが嬉しくて楽しかった気がするんだ。


小柳さんを家まで送り自分の家に帰る途中に神社があった。

『こんなのあったんだ…』

ザワ…

ご神木であろう大きな楠が風で葉を揺らした。

『さっきまで風なんかなかったのにおかしいな』

俺は頭をかしげて楠を見上げた。

「ここは風の通り道なんだ。だから風は絶対に止まない…」

暗闇から声が聞こえた!

『誰だ!!』

俺は少し身構えて叫んだ。

「俺の声が聞こえるのか?」

真っ暗で姿が見当たらない。

『だから誰なんだよ!?』

「くっくっ…
そうか!!やっと俺の声が聞こえるようになったのか。
嬉しいぞ!!ウルフ!」
俺は目を見開いた

『えっ?今なんて呼んだ…』

「お前ウルフだろ?違うのか?」

『なんで…』


「なんでって俺はお前の仲間だろうが!忘れたのか?」


『あんた誰だよ!気味わりぃんだよ!!出てこい!!』
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