風とウルフと忘れた過去
気が付くと目の前が真っ暗になってた。

目を開けてるのか閉じてるのかわからなくて…不安でしょうがなかった。

「…っち…」

何?

「…きて…」

何て言ったの?

「…さ…して…」

ねぇ?こっから出してよ


「目を…して」

え?

声が鮮明になってきた。


「藤原っち…起きて。目を覚まして…」

聞こえた。

泣き出しそうな弱々しい声…

優しい香り…

あの人だ。

顔も知らないこの人が俺のせいで涙を流そうとしている。

どうか泣かないで。
あなただけは泣かしちゃ行けない気がするんだ…

起きなきゃ…

目を開かなきゃ!

声の主を確かめるんだ!



だんだん視界がボンヤリと明るみを帯びてきたのがわかる。

右手が妙に暖かい。

日が当たってるのかな…

そんなことを考えた。

でもホントは…
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