風とウルフと忘れた過去

うっ…

眩しい…

でも太陽の光ではなく、蛍光灯の光だった。
俺が初めに見たのは、あの人だった…

真っ黒でストレートで肩まである髪。肌の白さ。

ものすごく懐かしい感じがするのに知らない人だった。

そして右手の暖かさはあの人の体温だった。
彼女は俺の右手をずっと握っていたようだ…。

彼女はイスに座り手を握ったまま俺が寝ているベッドに伏せって眠っていた。

寝ているのに心配そうな顔してる…

俺の目から不意に涙が流れた。

えっ！
自分で驚いた。自分の体なのに変だと思って…

涙を拭おうとしてつい右手を動かしてしまい彼女は起きた。

「ん…あー!!藤原っち起きた!?
どうしたの？泣いてるけどまだどっか痛い？」