アオイハル
紫宝院家の世話になったと知ったら、両親や兄が怒るのは目に見えている。



かといって、このまま紫宝院様にお礼を言わずにいたら、心証を悪くするだけ…。



学校で待ち伏せできやしないし、訪問するなんてもっと無理な話だ。



何か名案が浮かばないかと、礼拝堂に足を運んだ。



すると、先客がいた。



おそらく先輩だろうと思われる彼女は、泣いているのか鼻をすすっていた。



バツが悪くて出直そうとしたら



「お待ちになって、私が出て行きます。」



呼び止められた。



だけど、涙でグチャグチャになったままの彼女を追い出すのは忍びない。



「礼拝堂は誰のものでもありませんし、このままここにいてください。

お節介かもしれませんけれど、良かったらお使いください。」



私がポケットティッシュを差し出すと



「ありがとう。

遠慮なくいただくわね。」



そう言って、ティッシュを受け取った。





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