アオイハル
課題が放課後まで長引き、この前紫宝院様に出会った時間はとうに過ぎてしまった。



週末に作ったクッキーを手に急ぎ足で向かうと、彼と出会った場所の近くに差しかかった。



あ、この前見た時は蕾だった花が咲いてる…。



あの日以来、帰りは遠回りしてでも人通りの多い道を使っているから、この辺りに来るのは1週間ぶり。



花を愛でる時間がない私は横目で見て、通り過ぎる。



影子様が仰ったお寺は、此処かな…?



まだ中にいるのなら待つけれど、既に帰ってしまったのなら待つ意味がない。



かといって、中を覗き見る度胸は無いし…。



困り果てていると、中から人が出てきた。



私は嬉しくて、つい…



「紫宝院様!」



スカートが翻るのも構わずに駆け寄った。




「この前は危ないところを助けてくださって、ありがとうございます。

あの時は、お礼も申し上げず…。」



「別に、良いよ。」



紫宝院様に射るような目を向けられ、私の言葉は遮られてしまった。



クールというより、冷淡なんじゃないか?



彼の言動によって傷つく前に、立ち去ってしまおうか…。



そう思った時だった。





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