アオイハル
兄が帰ってきた。



何か楽しいことでもあったのか、鼻歌なんて歌っている。



「聖愛、聞いてくれよ。

今日の体育で、ムラサキの野郎にまた勝ったぜ!」



紫宝院の名を口にするのも嫌なのか、あだ名を付けて呼んでいるようだ。



「まぁ、これで3連勝…。

お兄様、凄いですわ!」



「アイツの女が僕に乗り換えたのを、まだ引きずってるんだろ?

このままいけば、今度の中間テストはトップいただきだな。」



乗り換えた彼女って、一昨日兄と別れたんじゃなかったっけ?



少しは落ち込む…とか無いの?



気になったけど、聞くのは止めた。



「また勝てるとよろしいですわね。

そうそう、学園の同級生からお手紙をお預かりしておりましたの。」



私は、ラブレターの束を手渡した。



兄は、少女マンガから抜け出したんじゃないかと思うような、物腰の柔らかそうな美少年だった。



その外見に惹かれる女子は多く、学園の生徒たちも例外ではなかった。



性格は、お世辞にも良いとは言えないけど…。






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