アオイハル
ポケットに手を入れて取り出すと、紐を思いっきり引いた。



辺りに、けたたましい電子音が響く。



「畜生!防犯ベルかよ!!」



取り上げられそうになったけど、私は絶対に放さまいとした。



「取り上げるより、車に乗せちまった方が早い!」



人通りが少ないとはいえ、ここは住宅街。



これだけ騒いでいるのに誰も出てこないのは、昼間は留守にしている家ばかりということなのか。



それとも、関わりたくないという…ことだろうか。



2人の男に勝てるわけもなく、車に押し込められる時だった。



突然、私を押さえつけていた力が緩む。



顔を上げると、私に絡んできた男が地面に倒れていた。



もう1人の男も、一撃で倒れる。



あっという間の出来事だった。



私の目の前に、兄と同じグレーのブレザーを着た男子がいた。



私が中学から女子校に通いだしたのは、両親の強い勧めだった。



中には乱暴な男の子もいるから…と、いうのが理由だったと思う。



目の前の男子を見て、両親の気持ちがなんとなく分かるような気がした。



進学校の生徒は物腰の柔らかそうな真面目な人ばかりというイメージがあったのだけど、彼は少し冷淡というか…恐いカンジの背の高い人だなと思った。





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