どくんどくん2 ~あの空の向こう~
「ハル君とユキちゃんにしか言えないことだけど・・・副作用っていろいろ人によっても違うんだけどね。亮ちゃんの場合・・・性欲がなくなっちゃったの。最初は悩んだわ。結婚して、私を女として見られなくなったのかと不安になった。でも、それが副作用だってわかってからは、違う不安が出てきた。いつまでだろうって。新婚のこの時期に、ラブラブしたいって思うじゃない?それができない寂しさもあったし、抱きしめられて安心するっていうのがもうなくなっちゃうのかなって。」
ユキは、みずきさんの細い手を握った。
しばらくの沈黙の間、時計の秒針の音がやけに気になった。
僕の鼓動と絶妙なハーモニーを醸し出していた。
「私、みずきさんの気持ち、わかるな。病気のせいだってわかってても不安になりますよ。本人にも愚痴を言えないし。何もなくても、結婚したら、女の人は誰でも一度は不安になるときがあると思う。私に飽きたのかな?とか私に魅力なくなったのかな?とか。病気のせいだとは言え、あんなにエッチなことばっかり言ってた水野さんだから、みずきさんは辛いと思う。」
ユキも僕にそんな風に思ったことがあったのだろうか。
みずきさんの目からは、涙がこぼれていた。
「ただ、ぎゅってしてくれるだけでもいい。やっぱりそれで言葉では感じることのできない安心感が得られることもある。たまに、そんなこと考えて悲しくなる。でも、そんなときに思い出すの。倒れた日のこと・・・。どんな体になろうとも生きていて欲しいと願ったあの気持ちを思い出すと、前向きになれるわ。生きていて、今隣にいてくれることが幸せなんだって。あースッキリした。こんな悩み誰にも言えなくて・・・話したらスッキリしてどうでも良くなっちゃった。」
涙を拭いたみずきさんは、立ち上がり、台所へお皿を片付けに行った。