どくんどくん2 ~あの空の向こう~
水野さんは1時間もしないうちに帰ってきたが、それから5分ほどで僕らは帰った。
みずきさんの話を聞いた後で、どんな顔して話していいかわからなかった。
「え~?もう帰るの?ハルっぺ、ユキちゃんまた来てね。」
水野さんに見送られ、僕はユキと手をつないで坂道を下った。
「同じ家に帰るって幸せだね。一緒に暮らそっか?」
ユキはいつも大胆な発言で、僕をドキドキさせるんだ。
そりゃ、僕だってそれはとても望んでいることだけど、同棲するなら結婚したいと思う。
ここで、僕が「暮らそう」と言っても、結局一緒には暮らせないことはわかっていた。
僕の両親も許さないだろうし、ユキのお父さんも寂しがるだろう。
「一緒に暮らしたいのは僕も同じ。もう少し待ってろよ。」
僕は握り合う手に力を込めて、歩き続けた。
坂道を下ると、とても美しい夕焼けが僕らの前に広がっていた。
「明日から、私家に戻るけど、寂しかったらいつでも駆けつけるからね。」
どっちが男だかわからない。
僕はユキに守られ、支えられ、包まれて、ようやく笑うことができる状態だった。
みずきさんの言葉がよみがえる。
抱きしめられる安心感・・・。
抱きしめられた時に相手の心がわかる。
胸の鼓動が重なることで、安心できる。
この不安は体のぬくもりを感じないと消せない。
電話やメールでは、僕はよけい寂しくなってしまうだろう。
隣で笑って、手を握り、僕を抱きしめてくれるユキの存在が必要だった。
僕は、ユキがいないと不安に押しつぶされそうで仕方なかった。
できれば24時間ずっとそばにいて欲しかった。