どくんどくん2 ~あの空の向こう~
「俺、ずっと悩んでたけど、ゆうじの話聞いて心が決まったのかもしれない。俺、何を悩んでたんだろうって思った。あの、命って歌聴いてるときに横で大泣きしてる彼女見てると抱きしめたくなった。お腹に手を当てて泣いている姿見てると、俺もお腹を触りたくなった。俺の子供なんだって思うと、彼女と子供を俺が守りたいって思ったよ。」
シンは落ち着いた表情で遠くを見ながら話す。
「そっか。僕もシンのその決意は嬉しい。シンが決めることだから、何も言わなかったけど。」
本当は僕も願ってた。
シンが結婚すること。
「俺も最初からそれが1番いいってわかってた。でも、なかなか勇気が出なかった。でも、今は我慢してじゃなく納得して結婚したいと思えるんだ。」
シンは、僕の目を真っ直ぐに見つめた。
「もう彼女にプロポーズした?」
「昨日の夜、彼女の家に言って伝えたよ。もっと早く安心させてやれたらよかったのにな。」
シンの横顔は、どことなくパパの顔になっているように見える。
「次はお前の番だよ、ハル。」
青春映画の主人公のようなキラキラとした瞳でシンが言った。
「え?結婚?まだ早いよ、僕らは。」
僕は、早くから結婚を意識していたわりには、まだ結婚する年齢じゃないって思ってた。
「何をもって、早いって思うのか俺にはわかんねーな。学生だからとか年齢で結婚の時期を先に延ばしてるなら、もったいないと思うな。」
結婚を決めたシンは少し僕よりを前を歩いてる気がした。
「そりゃ、早くしたいけど。ユキは、今家族と過ごす時間も大事なんだ。」
家族、特にお父さんとようやく心が通ったユキ。
今までの分まで、お父さんと楽しく過ごして欲しいって思うんだ。
「お前が思ってるだけなんじゃない?」
シンはニヤリと笑う。
風が僕の髪を乱れさせた。
「え?」
シンの意外な一言に僕は、驚いて目を見開いた。
「ユキちゃんの気持ち聞いたことある?何歳で結婚したいとか話したことある?」
そう言われてみると、真剣に結婚について話し合ったことはなかった。