どくんどくん2 ~あの空の向こう~
水野さん夫婦を迎えに行き、車中では相変わらずのエロトーク。
「ハルっぺ、Gパンなんか盛り上がってない?」
「ほんとバカだね、水野さん。今日だけはおとなしくしててよ。」
僕は怒ったフリしながらも、泣きそうに嬉しかったんだ。
水野さんの口から、また昔のような下ネタが出てきたことが・・・。
少しずつでも昔の水野さんに戻ってくれたら、と願う。
横で、優しく微笑むみずきさんの為にも。
寛太の家に集まった人数は、10人以上だった。
まだ家は買えないと言っていた寛太の賃貸マンションは、家賃8万とは思えない広さと綺麗さだった。
懐かしい面々に、思い出が甦る。
すぐに打ち解けてしまう水野さんは、さすがだ。
本当に病気なの?と何度も疑いの目で見てしまうくらい。
精神科医の先生と、弁護士の先生も奥さんを連れてきていた。
合宿中、一度も話したことのなかった隣の部屋の少年も来ていた。
寛太の奥さんは、出産後体重が戻らなくて大変だと言うだけあってプクプクと太っていたけど、顔は今風な美人だった。
ユキを紹介するときの僕の優越感・・・。
「ハルにはもったいないよ!」
と寛太が言うと、
「何か困ったことがあれば私に電話してください。」
と色目を使う弁護士の先生。
みんなで、お好み焼きを食べながらいろんな話をした。
眠っていた寛太の愛娘の『愛ちゃん』も、大きな笑い声に目覚めたようだ。
大きな口を開けて泣いている愛ちゃんは、寛太に抱かれ、すぐに泣き止み、幸せそうな顔をしていた。
5分もしないうちに、寛太の胸でまた眠った愛ちゃん。
愛ちゃんを見るユキの横顔を僕は見つめていた。
「ユキ、赤ちゃん欲しい?」
僕はこっそりユキに耳打ちした。
ユキは、照れたような表情でうなずいて、
「欲しいね。私とハルの赤ちゃん。」
と言って、愛ちゃんのほっぺを撫でた。
僕は、結婚に向かって動き出す自分の心にブレーキをかけるのをやめた。