どくんどくん2 ~あの空の向こう~
第21話(桜の木の誓い)
もうすっかり春らしい暖かな光が降り注ぐ車内。
ユキの持ってきたゆうじと大野君のCDを聴きながら、海へと車を走らせる。
「CD持ってこなくても、僕も持ってるのに。」
「あ!そっか、そうだよね。でも、そんな私がまた好きになった?」
「はいはい。そうだよ、好きになったよ。」
こうして、デートらしいデートをするのは初めてだった。
車の窓から見える眩しい波の光に、ユキは興奮気味にはしゃいでた。
「見て見て!!ハル!!今とびうおが跳ねたよ!」
「運転中だから、見れないの。っていうか・・・とびうおなんかいない!!」
「いるもん!今飛んだもん!」
「はははっ!!そうだな、ユキが言うなら間違いないな。」
車を停めて、海岸へと向かう途中、何度も何度もつまづくユキ。
「ほら!もう、ちゃんと僕につかまってて!」
僕は、スキップしたり、飛び跳ねたりするユキの細い腕を掴んで歩いた。
浜辺に座り、やっと落ち着いた様子のユキは、砂に僕の手を埋めて遊んでいる。
「また連れてくるからな。そんなに喜んでくれるなんて・・今までデートらしい場所連れていけなくてごめんな。」
ユキは僕の手を砂の中から堀り、砂だらけの僕の手を握った。
「ふふふ。ハルと一緒にいられるならどこでもいいよ。でも、海って大好き。」
「海でも山でもどこでも一緒に行こうな。」
「うん。砂漠だって、南極だってハルとならいいよ。」
「ば~か!」
こんな風にこれからもユキと過ごしていきたい。
ユキの笑顔を見ながら、毎日を過ごしたい。