どくんどくん2 ~あの空の向こう~


明るい『もしもし』に安心した。

だけど、すぐに涙声になったユキを僕は抱きしめたかった。

そばにいてあげたかった。

また、同じように繰り返すかもしれない不安が消えないユキのお父さんはお母さんに離婚を願い出たらしい。

悩んだ挙句のお父さんの決意だとわかる。

決して、愛がなくなったわけでもなく、むしろ・・愛しているからこその決心。

複雑な気持ちが入り混じる中で、お父さんが出した答えが離婚だった。

またお酒を飲んで、お母さんや家族を泣かせることだけは耐えられないと思ったんだろうか。

それほどまでにお酒ってやめられないものなの?

1年近くの施設での生活が終わり、これからだって言うその初日に、もうお酒の不安がよぎるということは、やはりお父さんの中からお酒の存在が抜けていないということ。


夜中まで家族で泣きながらの話し合いが行われた。

結局、決めるのはお父さんとお母さん。

ユキはどんなお父さんでも好きだと言った。

またお酒に手を出しそうになった時、そばで私が止めたいと言った。

離婚して一人で暮らすとなると、止めてくれる家族はいない。

あきらめてしまったのか、本気でお酒と向き合って決別しようとしてるのか・・・。

僕がお父さんの退院祝いのディナーに行かなかったのは、心のどこかでこんな悲しい出来事も有り得ると思っていたからなのかもしれない。
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