どくんどくん2 ~あの空の向こう~
第25話(夏の終わり)
もうすぐ夏が終わる。
僕は夏の終わりが一年で一番切なくなる。
小さい頃からそうだった。
夏休みが終わるせいかもしれないが、夏の終わりは胸が苦しくなる。
夏の思い出たちが、僕に向かってバイバイしているようだった。
夏休み、自転車でトンネルの中を走った中学時代。
トンネルを抜けると、別世界が広がっていた。
顔を見合わせてみんなで大笑いした。
みんな顔が排気ガスで真っ黒になっていたっけ。
河原で花火をしたあとに、誰かが服のまま川に飛び込んだ。
そのまま全員がびちょぬれになった。
服のまま川に入ったのは、あれが最後だった。
置いてあった原チャに乗り、風に吹かれたときのあの気持ちよさを僕は忘れない。
あの日の夜空の星も、あの橋からの景色も、あのキラキラした気持ちも。
いつのまにか、やんちゃもしなくなり、少しずつ大人になる。
大人になることと、秋に近づくことって似ている気がする。
夏の思い出は、なぜが馬鹿騒ぎして大笑いして、羽目を外した思い出ばかり。
秋になると、夏の後片付けが待っていた。
友達の1人は、夏に海で出会った彼女との関係を終わらせるために学校を休んで謝りに行った。
夏にしたやんちゃがばれて、先生に怒られるのもこの季節だった。
夏の日焼けが少しずつ薄くなることが、切なくて寂しくて胸がキュンとした。
日焼けの跡が消える頃には、夏が思い出になる。