どくんどくん2 ~あの空の向こう~
「ユキから話を聞いたのかな?その顔は。私は、プライドが高いんだね・・。弱い姿見せたくないんだ。ハル君になら見せれるんだけどな・・。」
「今、お父さんには家族の支えが必要だと思うんですが、一人で暮らすことに不安はないんですか?」
神宮司君と呼んでいたお父さんだったが、今ハル君と呼んでくれた。
僕も、おじさんと呼んでいたのに自然に、お父さんと言ってしまった。
「不安だらけだ。だけど、その不安より、家族にがっかりされることのほうが怖い。」
「ユキは、どんなお父さんでも好きだと言ってます。また前のようにお酒に手を出したとしてもお父さんのことは見捨てないと家族で話しているといつも言ってます。ユキは、お父さんの愛情に飢えてるんです。だから、これから少しずつでもお父さんとの思い出を増やしていってあげて欲しい。もし、またユキを泣かせるようなことになったとしても、今離れてしまうことよりユキは幸せです。近くにいて、楽しいことも辛いことも一緒に感じながら生きることが、ユキにとって幸せなんです。」
いつのまにか運ばれているコーヒーから、湯気が広がる。
「こうしていると、ハル君と初めて話したあの病院を思い出すな・・。あの時も今のように君に説教されちゃったな。」
「す・すいません。説教なんてそんなつもりは・・・」
「いやいや、いいんだよ。私には新鮮だった。君は本当にユキの事を愛してくれているんだね。私が今までしてきた事をユキは恨んではいないか、と今でも思うことがある。でも、君があの時病室で言ってくれた言葉が私のその不安を取り除くんだ。ユキも君には嘘はつかないだろうからね。君も絶対に嘘は言わない男だとわかる。だから、安心するんだな。君といると。」
「安心・・ですか?」
コーヒーにミルクを入れる手が止まる。