どくんどくん2 ~あの空の向こう~
「これが最後・・最後のチャンスだね。私の。でも、もう悲しませたくないんだ。大丈夫だと思ってはいても、目をつぶると、家族の悲しい顔がよみがえる。飲酒運転で捕まった時のあの夜の。」
「大丈夫です!!!!お父さん。」
僕はお父さんの両手を握り、目の奥を見た。
「自信を持っていいと思いますよ。辛い施設での経験を自信にして、前向きに生きてください。傷つけたくないから、離れるというのは昔のお父さんに逆戻りですよ!逃げていて何も得るものはありません。悲しい家族の顔も見ないですむけど、家族の笑顔も見れないんですよ!!」
下を向いたお父さんの目からは、涙がこぼれそうになっていた。
静かな店内に、優しいボサノバ調の曲がかかっている。
「君に何度助けられたら、私は大人になれるのかな・・。成長してないな。」
病院で初めて会ったあの日から、随分白髪が増えたお父さん。
「今まで苦労した分、安心できる家族との暮らしを楽しんでください。そして、もっとみんなに甘えてもいいと思いますよ。弱くたって情けなくったって、父親は世界にたった一人なんですから。」