どくんどくん2 ~あの空の向こう~
店長・・・
その言葉を聞いて僕は状況が理解できた。
店長は、店のお金が合わないといつもぼやいていた。
店の休憩室にまで、隠しカメラを仕込む用意をしていた。
たまたま、僕のバイトの時間の後に店長が入ることが多かった為、僕に疑いの目は向けられなかった。
おそらく、さゆりさんが疑われたのであろう。
「僕から、店長に話しますよ。僕は、いつもさゆりさんの後に入ってたから、さゆりさんがそんなことしてないってわかります。それに、みんな友達が来たら、安くしたりって当たり前のようにしてたから、ピタっと合うなんて無理なんですよ。」
さゆりさんは、潤んだ目で僕を見上げた。
「・・じん君・・。あたし、じん君しか頼る人いなくて・・みんな・・どこかで・・あたしのこと、信用してくれてない・・だから・・ごめんね・・・」
「いいよ、そんなの。大丈夫だから安心してください。」
僕は、さゆりさんを抱きしめている自分に、ハッとした。
「あ、僕今から店行って来ます。店長まだいるでしょ?」
僕は、これ以上さゆりさんと一緒にいるのが怖かった。
僕は、胸の高鳴りを自覚してしまった。
僕は、さゆりさんを自分の意思で抱きしめていたんだ。
「いかないで・・お願い。まだここにいて・・」