どくんどくん2 ~あの空の向こう~
「ごめん。僕、そういうのキライだから・・。浮気とか、二股とか、そんなの理解できないから。僕じゃ、さゆりさんを支えることはできないです。」
僕は、ゆっくりとさゆりさんの腕を僕の腰から離した。
「店長に、話してきます。あ・・僕バイト今月でやめるんで・・。」
さゆりさんは、呆然と立ちすくみ、僕を見つめていた。
「じん君・・お願い。今夜だけでもいいの・・」
そういうことか。
さゆりさんは、
とても知的で頭も良く、
面白くて人気者だけど、とても寂しい人なんだ。
たった一晩、寂しさを紛らわせてくれる男は、さゆりさんを幸せにはしてくれない。
「さゆりさん、もったいないよ!!自分の体と心、もっと大事にしてよ!」
僕は、その後店長と話した。
店長の言いたいことは伝わった。
さゆりさんが気に入らないと言うのが疑った理由だった。
今の店長が、このコンビニの店長になる前から、働いていたさゆりさんはいつもみんなのリーダー的存在で、バイトの連中も店長の言うことより、さゆりさんの言うことを聞いていた。
さゆりさんは、たまに店のタバコを吸っていたらしい。
それだけの理由で、1人の女性の生き方を否定するような発言で、傷つけた。
「わかったよ。もう・・あいつが盗んだんじゃないって。みんなの少しずつの気の緩みが原因だろう。一つくらいいいだろう、って全員がそういう考え方になってる。俺がなめられてんだよ。」
店長は、僕が辞めたいと言うと、とても残念そうな顔をした。
僕だけが、店長と唯一ちゃんと会話できるバイトだったらしい。