どくんどくん2 ~あの空の向こう~
「僕は、歌うことが怖かった。ゆうじがいなくなった今、もうSpring Snowではないと自分で感じていた。ゆうじがいてこそのバンドだった。でも、僕は歌うことに決めました。」
大野君は、静まり返る会場を見渡した。
息を飲む音さえも聞こえてしまいそうだった。
大野君は、深呼吸をしてから、ゆうじの笑顔にこう言った。
「ゆうじ、お前が僕に歌をくれたんだ。お前の作った歌は・・多すぎる。僕が、これから歌っていったとしても、何年先までもお前の歌で歌えるくらいにな。」
そして、大野君は静かにステージの袖へ下がった。
みんなのすすり泣きが聞こえ、その泣き声がまた胸に響き、泣きそうになる。
そして―
映し出されたのは
ゆうじからのメッセージ・・・
病室から、僕らへ向けられたメッセージが
流れ出す
「みんな!!元気?
このビデオレターをみんなが見ているということは、僕はもういないんだね。
僕は、僕がいなくなった後のみんなが心配で仕方ないよ。
僕は、幸せだった。
後悔はしてない。
僕の人生は、みんなに負けないくらいに中身の濃い楽しい人生だった。
だから・・今日限り、泣くのはやめて。
僕を思い出してくれるときは、みんな空を見て
笑って欲しい。
僕は、病室で、たくさんの歌を作ってる。
僕のいなくなったSpring snowで大野君が歌い続けてくれることを
信じて・・・
大野君の声は素晴らしい。
照れ屋さんだから、なかなか歌わないけどね。
僕が歌いたかったけど、歌えないので
大野君に託します。
聴いてください。
僕の親友と、その彼女へ捧げる歌です。
『僕』です。 」