どくんどくん2 ~あの空の向こう~
第5話(第3回H講座)
ゆうじと大野君の歌に酔いしれたその夜。
帰り際には、雪がチラついていた。
胸の奥から込み上げる感動で体が火照っていた。
ゆうじと大野君の優しさ、友情に僕らは涙した。
ユキのお父さんが、ゆうじと大野君を車で送ってくれた。
僕らは、駅までの道のりの間、寒さも忘れていたようだ。
「俺、あいつらの歌聞くと、すっげー切なくなるんだ。」
シンは、久しぶりに会うユミちゃんと並んで歩く。
やっぱりお似合いだな・・と、懐かしい記憶がよみがえる。
何かが少し違ったら、2人は付き合っていただろう。
「うん。高校を思い出すよね。な~んか、高校に戻りたいよね。今は自由すぎて疲れる。」
ユミちゃんの言いたいことが手に取るように理解できる。
高校を卒業し、僕らは自由を手にした。
勉強したくなかったら、しなくていい。
やりたいことがあるならそれをやればいい。
自由ってことは、自分自身で全部責任取るってことなんだ。
いろんな決断を自分でするんだ。
時間もある。
さぼりたければいくらでもさぼればいい。
でも、その分ツケは回ってくる。
やる気のないヤツにうるさく言ってくれる先生はもういない。
学ランが短いと怒鳴ってくれる先生もいない。
掃除の時間もない。
当番もない。
掃除のおばさんが掃除してくれたトイレで用を足す僕ら。
汚しても、何も感じなくなる僕ら。
掃除のおばさんに対する態度は、自分で考える。
態度が悪い僕らを叱ってくれる先生は・・・もういないんだ。
僕らの未来は、僕らで選んでゆくんだ。