どくんどくん2 ~あの空の向こう~
第5話(第3回H講座)


ゆうじと大野君の歌に酔いしれたその夜。



帰り際には、雪がチラついていた。


胸の奥から込み上げる感動で体が火照っていた。

ゆうじと大野君の優しさ、友情に僕らは涙した。



ユキのお父さんが、ゆうじと大野君を車で送ってくれた。



僕らは、駅までの道のりの間、寒さも忘れていたようだ。


「俺、あいつらの歌聞くと、すっげー切なくなるんだ。」


シンは、久しぶりに会うユミちゃんと並んで歩く。


やっぱりお似合いだな・・と、懐かしい記憶がよみがえる。


何かが少し違ったら、2人は付き合っていただろう。


「うん。高校を思い出すよね。な~んか、高校に戻りたいよね。今は自由すぎて疲れる。」


ユミちゃんの言いたいことが手に取るように理解できる。


高校を卒業し、僕らは自由を手にした。

勉強したくなかったら、しなくていい。

やりたいことがあるならそれをやればいい。

自由ってことは、自分自身で全部責任取るってことなんだ。

いろんな決断を自分でするんだ。


時間もある。

さぼりたければいくらでもさぼればいい。

でも、その分ツケは回ってくる。

やる気のないヤツにうるさく言ってくれる先生はもういない。

学ランが短いと怒鳴ってくれる先生もいない。

掃除の時間もない。

当番もない。



掃除のおばさんが掃除してくれたトイレで用を足す僕ら。

汚しても、何も感じなくなる僕ら。

掃除のおばさんに対する態度は、自分で考える。

態度が悪い僕らを叱ってくれる先生は・・・もういないんだ。



僕らの未来は、僕らで選んでゆくんだ。

< 33 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop