どくんどくん2 ~あの空の向こう~
「水野さんってかっこいいです。男の僕から見ても憧れなんです。奥さんとして、やっぱり心配とかあります?」
よく考えてみると、みずきさんと2人で話すのは初めてだった。
「私やきもちやきなの。だから、結構しんどかった。誰にでも優しいし、すぐ親しくなるからね。相手は誤解しちゃうときもある。特に仕事柄、患者さんの心の悩みとか聞くことも多くて、亮ちゃんは真剣に相談に乗ってあげちゃうから、患者さんが好きになってしまったこともあった。」
みずきさんはテーブルに肘をつき、天井を見たり窓の外を見ながら少し照れた顔をした。
「それわかる気がする。錯覚しちゃうんですよね。看護婦さんが優しくしてくれたりしたら男ってちょっと誤解しちゃったりする。でも、水野さんは絶対一筋だと思います。」
俺は、お世辞ではなく心からそう思ってる。
水野さんは、浮気や裏切りに最も縁遠い人だと思う。
「そう?最近私も強くなれたから、信じることが何よりも大きな愛だって思える。結婚前はね、結構修羅場もあったよ。私が勝手にやきもちやいて・・携帯見ちゃったり・・ね。」
みずきさんは紅茶を飲みながら笑う。
「へ~~!やっぱあるんだ。女の子って絶対携帯見るって言いますよね。ユキの場合全く興味なさそうだけど。僕の方が、見たくなるときがある。」
少し覚めた紅茶は、とても高そうな味と香りがした。
住む場所って重要なんだ…としみじみと感じた。
こういう部屋で過ごすと、穏やかな幸せに包まれて心がほっとする。