どくんどくん2 ~あの空の向こう~


自分の周りにいなかっただけだろうか。

しかし、調べているうちに思い出したことがある。



ゆうじは、遠足になるといつも朝から具合が悪かった。

バスでも酔ってしまって、修学旅行も後半ずっと寝ていた。

ゆうじは、人前に出ることを極端に嫌がっていた。

先生に本読みを当てられるだけで、顔が真っ赤になり、冷や汗をかいていた。

保健室にもよくお世話になっていた。

一度、ゆうじのお母さんに『自律神経失調症』という病気だと聞いたことがあった。

不思議な名前だと思った記憶がある。


水野さんの病気も、自律神経に関係があることがほとんどだそう。

僕のほんの少しの知識だから、本当かどうかわからないけど。



ユキとゆっくり話す時間が欲しかった。

ユキの家に行って、お父さんに話を聞いてみたかった。


夜の10時になってもユキからの電話がないことに、イライラが激しくなった僕は、自分から電話をかけた。

かけなければ良かったと後悔したときには、もう遅かった。


上機嫌な声で電話に出たユキは、学校の帰りに友達とご飯を食べている最中だった。

「ハル!ごめんね。電話できなくて・・。今、イタリアンのお店でみんなと晩御飯食べてるんだ。作品も、どんどん新しいアイデアが生まれてきて、すごく楽しいよ。」


「そうなんだ。良かったな!毎日大変だけど、無理するなよ。」


「うん、ありがと!じゃ、今日は遅くなるからまた明日電話するね。」


ユキは、電話を切ろうとしたその時、聞き覚えのある声が電話の向こうから聞こえた。

忘れはしない、あの声。

あの男も一緒なんだ。

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