どくんどくん2 ~あの空の向こう~


彼女は、医務室で休むだけで、病院へは行かなかった。

その夜、興奮して寝付けない僕らは部屋に集まって小鳥のさえずりが聞こえるまで話していた。


寛太の告白に僕は、驚きを隠せなかった。

「俺の彼女もああいう発作がよく出る。パニック障害っていう病気なんだ。だから、子供を産むことへの不安があったんだろうな。でも、今は薬もやめて、安定してる。」

水野さんが倒れてから、まだそんなに日が経ったわけではないのに・・・。

身近でこう何度も同じような症状に遭遇するとは。


この病気の人口がどれだけ多いかということだ。


「僕の知り合いの人も、過換気症候群で病院に運ばれたんです。それから、なかなか僕にも会えないみたいで。この病気のこと詳しいですか?」


僕はその時、その病気が精神科の先生に関わりがあるかどうかは知らなかった。

ただ、医者という立場の人に聞きたかった。

「最近は、本当に多いね。この部屋にいる7人の中で2人も、身近にパニック障害の人がいるんだからね。ストレス社会の影響なのか、なんなのか。精神科医がここまで忙しくなる世の中っていうのも、悲しいものだね。」


僕はパニック障害という病名を聞いて、泣きたくなった。


水野さんは・・・


パニック障害なんだ。




認めたくなかった事実。


何度か本で目にしたが、そこまで重症だとは思いたくなかった。


寛太の奥さんになる人は、エレベーターに乗れないと言う。


どこへも逃げられないという恐怖から、パニックになる。


それも、一度エレベーターに閉じ込められたという恐怖体験が原因になっている。




迷い込んだ猫が、中庭でミャアミャアと泣き続けている。


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