どくんどくん2 ~あの空の向こう~
トントントントン・・・
ん??
懐かしい音で目が覚めた。
なんだか夢から覚めたくないようないい夢を見ていた気がする。
まだゆっくりとしか動き出さない僕の脳達が、音の方向へと僕の視線を向かわせる。
そこには、エプロン姿で何かを切っているユキの後姿があった。
その姿を確認した僕の脳は、急にすばやく回転し出す。
今がチャンスだ、ハル!
そう僕に語りかける。
「あ!起こしちゃった?ごめんね。ハル。おはよ~~!」
にっこり微笑みながらユキは、子供に話すように僕に話しかける。
「ん~~~~。よく寝た・・・。」
起き上がった僕は、そのまま寝ぼけたフリをして、ユキに近づいていく。
「ユキ~~・・」
僕はユキの後ろから・・・!!!
念願の
『エプロン姿のユキを後ろから抱きしめる』
を実現させたのだ。
「もう・・ハルったら。寝ぼけてるの?危ないからあっち行ってて。」
そのセリフに懐かしい母との記憶がよみがえる。
寂しがり屋の僕は、小さい頃、料理をする母の後ろばかり追いかけていたっけ。
下から見上げると、母は優しく
「ハル、危ないからあっちで遊んでて。すぐ行くから。」
って言ってくれたな。