どくんどくん2 ~あの空の向こう~



トントントントン・・・



ん??



懐かしい音で目が覚めた。

なんだか夢から覚めたくないようないい夢を見ていた気がする。

まだゆっくりとしか動き出さない僕の脳達が、音の方向へと僕の視線を向かわせる。

そこには、エプロン姿で何かを切っているユキの後姿があった。

その姿を確認した僕の脳は、急にすばやく回転し出す。



今がチャンスだ、ハル!


そう僕に語りかける。


「あ!起こしちゃった?ごめんね。ハル。おはよ~~!」


にっこり微笑みながらユキは、子供に話すように僕に話しかける。


「ん~~~~。よく寝た・・・。」


起き上がった僕は、そのまま寝ぼけたフリをして、ユキに近づいていく。


「ユキ~~・・」


僕はユキの後ろから・・・!!!


念願の

『エプロン姿のユキを後ろから抱きしめる』

を実現させたのだ。


「もう・・ハルったら。寝ぼけてるの?危ないからあっち行ってて。」


そのセリフに懐かしい母との記憶がよみがえる。


寂しがり屋の僕は、小さい頃、料理をする母の後ろばかり追いかけていたっけ。

下から見上げると、母は優しく

「ハル、危ないからあっちで遊んでて。すぐ行くから。」

って言ってくれたな。

< 8 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop