どくんどくん2 ~あの空の向こう~


そして、僕のシャツの胸のポケットが濡れて透けてしまうほどに涙を流した。

ユキの涙の訳が、僕にはよくわからなかったがユキの頭をなでているうちにユキの気持ちが理解できたようだった。

僕らは、手をつないだだけで相手の体調や気持ちがわかるほどに通じ合っていたんだ。

負けるもんか。

僕とユキは、ただの恋人じゃないんだ。

僕は、なかなか顔を上げようとしないユキを優しく抱きしめた。


「ユキ・・ごめんな。辛い想いさせて。僕がばかだった。」

ユキは、言葉にならない声でごめんねと僕に言った。

玄関先でいつまでも抱き合っているわけにもいかないと思ったが、とても心地よかったのでしばらくそのままでいることにした。

どうしてこうなってしまったのか、僕にもユキにもわからない。

あんなに仲の良かった僕らが、どうしてこんなことになったのか。

今となっては、全てが誤解やささいなすれ違いだったように思う。


「ハル・・もう私ハルに嫌われたと・・思った・・。」


か弱いユキの声は、僕の胸に響いた。

僕が悪かったんだ。

僕が子供だった。

好きという気持ちだけで突っ走っていた高校時代を忘れてしまっていた。

変なプライドや、嫉妬から、僕は自分を失っていた。


「ばかだな・・ユキ。僕がユキを嫌いになることなんてあるわけないだろ。僕は一生ユキを愛してる。」

まるでドラマのワンシーンのようなシチュエーションの為、僕は恥ずかしさも感じずに愛してるなんてセリフを言っていた。
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