どくんどくん2 ~あの空の向こう~
第13話(それぞれの窓)
季節の移り変わりは早いもので、もう少しずつ春の香りがする頃となった。

ユキと僕は、以前より強い絆で結ばれている。

それは、僕の心の平安が物語っている。

相変わらず忙しいユキだけど、どこにいても何をしていても一緒にいる気がする。


水野さんとは、全く連絡を取っていない。

電話をするのが怖いというのが僕の正直な気持ち。


僕は、水野さんが運ばれた病院にユキと一緒に一度だけ行った。

水野さんが退院していることはわかっていたが・・・。

あのタクシーの運転手さんに会いたかった。

話を聞いたユキが、すぐに会いに行こうと僕の重い腰を上げた。


ゆうじに会いに行ったときもそうだった。

ユキは、考えているなら行動を、と男らしく僕を引っ張る。



『山之上忠 55歳 趣味 ゴルフ 親切安全快適運転約束します!』

僕の記憶が鮮明なうちに、会いに行こうとは思ってはいたが、なかなか行動に移せずにいた。

すぐに山之上さんを見つけることができた。

「わざわざすまないね。若いのにしっかりして。私の息子もちょうど君くらいの歳なんだよ。お饅頭が好きだから喜ぶよ。」

ユキが買っていった和菓子を渡し、お礼を言ってすぐに別れた。

山之上さんが別れ際に気になることを言ったんだ。

「運ばれたお友達は元気になりましたか?私と同じ病気かも知れないねぇ。頑張ってほしいね。」

タクシーの中の会話だけで、水野さんの病気がわかったのだろうか。

あまりに別れ際だったため、そのまま会釈をして別れたが、今も気にはなっている。


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