どくんどくん2 ~あの空の向こう~
会場の拍手がなかなか鳴り止まなかった。
体育館の舞台に、ゆうじと大野君の2人だけ。
スポットライトが2人を照らす。
大野君のギターの音色とゆうじの優しい歌声に、僕らは酔いしれた。
初めて聞いたこの歌は、しんみりした切ないメロディーで失恋の歌のようだ。
僕はユキと別れかけた日のことを思い出しながら聴いていた。
「ありがとう!この曲は、ここで初めて歌いました。まだ、CDにも入っていない新曲です。僕の親友であるハル君という男の子の為に作ったんだ。運命の彼女だと信じていた相手と、何かがうまくいかなくなり、不安になって、僕に電話をくれました。僕はハル君に会いにいく車の中でこの詩を書きました。」
僕は、あの日のことを思い出した。
遠い場所から僕に会いに来てくれたあの日。
僕を救ってくれたゆうじの笑顔。
泣きそうな僕の心を暖めてくれたゆうじと大野君。
この歌を聴いているとき、あの日のことを思い出したのは、当然と言えば当然だったんだ。
あの日の僕の歌なんだから。
横でユキがクスクスと笑っていたので、僕はユキのおでこを突っついた。