S兄彼氏。

「ぁ・・・ありがと」

目も合わせず、聞こえるか聞こえないかくらいの声でそっと呟くと、金指くんは何も言わなかった。

聞こえてなかったかな・・・。
そう思って、ちょっとだけ横を向いて金指くんの顔色を窺う。


ドキンっ・・・!

絡まる視線。

吸い込まれるような眼差し。

そして、小悪魔のような微笑み・・・・・・。


不覚にも、ちょっとだけ心が揺らいだ。
あたしは、パッと目を逸らした。
そうせずには、いられなかったんだ。




ピピピッ・・・ピピッ・・・・・・

―お昼休み。

今日は唯が祐樹くんの所に行ってる。
あたしは席に座って、ボーっとするだけの暇人・・・。
時間を潰すために、何気なく携帯をいじる。

「・・・ぁ」

偶然たどり着いた、か行のフォルダ。
ピ・・・ピ、ピ・・・・・・

「和希くん、花保・・・・・・金指くん・・・ううぅ」
・・・何で登録しちゃったかなぁ。
「はああぁー・・・」
つい深い溜め息。
なんか、消すに消せないし・・・。

「おっ! 俺の名前登録されてるし! って事は脈アリ?♪」
突然後ろから奪われた携帯。
意地悪な笑顔で問いかけてくる金指くん。
んなっ・・・!
いつの間に来てたの??!
「ちょっと! 勝手に見ないでよ! 別に脈とか無いから!!」
「俺の携帯も見る? あ行の一番上だぜ、愛理って♪」
「だから何!」

・・・ってゆうか。
あたしの番号・・・登録されてるの?

トクンっ・・・。

口先では怒ってても、ハートだけは正直で。
どんどん高鳴る鼓動に、気づかずにはいられなかった・・・。





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