S兄彼氏。
パっと顔を上げると、お母さんと視線が絡まった。
お母さんの眼差しは・・・いつになく、真剣だった。

反射的に身を構える。


「愛理には、双子のお兄ちゃんがいるの」




カシャンっ!

「・・・っあ」

心ここにあらず。
まさに今のあたしのこと。
さっきから、何をしてても上の空で・・・。
勉強しようとしても手につかず、この通りシャーペンを落としたり・・・の繰り返し。

“だから、4人で暮らす事になるの―・・・”

「そんな事急に言われてもぉ・・・」

お母さんによると、もう4人で暮らす計画は進んでるらしい。
お兄ちゃんとお父さんは今まで2人暮らしをしてきてて、最近近くに引っ越して来たんだとか・・・。

「そこまで進んでて、嫌とも言えないじゃーん・・・」

別にね、嫌じゃないんだ。

ただ・・・不安で。

16年間続いてた2人家族が、突然4人になるなんて・・・

“一緒に暮らすのはまだ先になると思うから、心の整理つけておいてね―・・・”

そうは言われても・・・。

未だに、心のモヤモヤは消えない。


一気に圧し掛かってきた不安は、どこにぶつければいい?
あたしには、分からないよ・・・。

考えに考えた頃には、心も体も疲れきっていて・・・
あたしは、まるで現実逃避するかのように、深い眠りについた。




< 32 / 34 >

この作品をシェア

pagetop