Turning Star
「……そうね、この辺りで良いわ。
 藍、……お願い。」



そう言って、隣にいる藍に目配せをした。
藍は、コクリと頷き、意識を集中させていった。
そして、手の中に生み出された、小さな水の結晶。
というか、氷、と言った方が良いだろうか。
























それを受け取って、私は、ゆっくりと瞼を閉じる。
そして、現実から離れ、想いを馳せ、言の葉を紡ぎ出す。




「あなたは、そっと私を包み込んでいく。
 ゆったりと流れる時に身を任せ、心は、現実から離れ、
 どこか遠い所まで流れていってしまいそう。
 眠り続ける私の頬に、あなたは、微かに触れ、離れ、また優しく撫でていく。
 あなたは、冷たいのに、その中に溢れんばかりの温もりを抱いて。
 ……霧の王女セリーナ、我の元に来たれ。」





そう言って、ゆっくりと瞼を開けた。
あぁ、貴方は、何て美しいのだろう。
霧によって作り出された、宝石を身に纏い、綺麗なドレスに身を包み、
彼女は、静かに佇んでいた。




















「麗様、……この学園一帯を覆う霧を一掃すれば良いのですね?」



澄み切ったソプラノの声。
私は、その声に酔いしれそうになったけど、コクリと頷いた。
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