Turning Star
「もう少し、君のカードの業、見てみたかったけど、
 生憎、……焦らされるのは、あんまり好きじゃないんだよね。」


カトリーヌの声が、やけに近くで響いた。
振り向くと、一人の男の影があった。
そして、煙が酷いために誰かは分からないが、おそらく麗であろう、
もう一人分の影が、隣に寄り添うようにあった。




















「てめぇ、……もう許さねえ。」


俺は、そこに向かって走った。
湧き上がってきたのは、純粋な怒りだった。
麗を、そうやすやすと奪わせはしない。
というか、誰にも渡したくなかった。































「ふふ、……感情の起伏が激しければ激しいほど、そこに隙を生み出す。
 だから、常に冷静であらねばならない。
 君も、……まだまだ甘いね。
 洗脳の基本は、相手の焦り、怒り、恐れ、そういった感情に付け込む事だよ。
 そうする事で、……より乗っ取りやすくなる。」


カトリーヌの傍らにいる麗に手を伸ばすと同時、隣の人物と視線が絡み合った。
本能的に、ヤバイと思った。
けど、逸らそうと思っても、逸らせなかった。
顎を掴まれ、軽く持ち上げられ、嫌でも目を逸らせなくなる。
そして、俺の心を射抜くように、強烈な眼力が送られてくる。
< 111 / 169 >

この作品をシェア

pagetop