Turning Star
「可哀想なのは、……貴方の方だわ。」



【……ふぅん、理由を聞かせてもらおうかな。】







一言だけそう言い切った私に、その人は、興味津々といった調子で聞いてきた。
その裏には、そんな理由なんてない、という明らかな確信が窺えた。
































「貴方は、……希望を捨てた。
 ただ、目の前には絶望しかない、そう思い込む事で生きている。
 そうしないと、現状に納得がいかないから?
 ……違うわよね、貴方は、結局の所、光から逃げているだけよ。
 ……確かに、闇は、貴方を優しく包み込んでくれるかもしれない。
 実際、貴方は、その甘美な響きに酔いしれていると思う。
 だけど、闇は、……この世界で一番冷たいわ。
 確かに、闇に光を灯す事は難しいわ。
 光を恐れる人なら、尚更、ね。
 だけど、貴方は、強がっているだけの、本当は、とても臆病な人だと思う。
 本当は、心のどこかで光を求めているのかもしれないのよ?
 闇は、……優しいけれど、同時にいつ突き放されてもおかしくない。
 だけど、光は、いつだって温かいわ。
 どんな時も、人の心を明るく照らしてくれるものよ。
 …………せいぜい、この事を覚えておきなさいな。」





そこまで言って、私の意識は途切れた。
だから、この声の主の返事も、私には聞こえていなかった。
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