Turning Star
「へぇ、……初耳だわ。
 凄い人なのね、その人。
 分かったわ、どうしても治りそうになかったら、
 彼の所に行ってみるわ。」



「初耳って……。
 まぁ、ともかく、気をつけなさい。
 …………さ、朝食も食べ終わった事だし、行きましょう。」


























私は、何の取り柄もない、ただの女の子。
あえて言うならば、本が好き、文章を書くのが好き、
それだけだと思う。
そもそも、好きなだけなら取り柄とは言わないのかも
しれないけど。
内心自嘲しつつ、私は、藍と教室へ向かった。





































聞こえてくるのは、藍への羨望の声。
恭しいとも感じられる、挨拶の声。
そして、私に対する、非難の声。
男子はそんな事ないけど、女子っていうのは、
本当に質の悪い生き物で。
朝から聞きたくもない陰口、いや、もう聞き慣れてしまったそれが
耳に入ってくる。




「あの子、いつになったら能力が見つかるのかしら。」


「そもそも、能力を持っているのかしら。」


「藍様がいらっしゃらなければ、何も出来ないくせに。」


「藍様が優しいからって、図に乗るのも大概にしなさいよ。」





そんな誹謗中傷の声を聞き流し、私は、教室へ向かった。
親友の同室者は、眉間に皺を寄せたままだったけれど。
藍が気にする事じゃないよ。
私は、心の中でこっそり呟いた。
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