Turning Star
「ううん、別に良いわよ。
 本がないのは退屈だけど、……話していれば、ある程度紛らわせるし。
 それに、……皆が来てくれるまでは、貴方と私は、ここで一緒に暮らすのだから、
 そんなに気遣ってくれなくても大丈夫よ。」


だから、私は、彼から視線を逸らして、俯いたままで言った。




















「……麗って……。」


不意に、カトリーヌが呟いた。

















「麗は、……優しいね。」



「……?
 私が、……優しい?」



何を思って、彼がそんな事を言ったのか分からなかった。
でも、何だか、続きが知りたいと思って、私は続きを促した。




















「うん、まるで、……アリス兄さんみたい。
 僕の側近のような、恭しい、……偽りの優しさじゃなくて、
 ……ちゃんと僕自身を見てくれている。
 アリス兄さんはね、……温かくて、優しい人だった。
 そりゃあ、闇薔薇の長だから、心も大分堕ちていたけれど、それでも、
 ……僕が欲しかったものを確かに持っていた。」


その表情は、どこか羨ましそうだった。
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