Turning Star
「そんな…………。」


血が作り出す宿命なんて、……私が思っている以上に、この問題は、
解決が難しそうだ。
だって、血に抗えば、身体が死んでしまう。
だからといって、血に逆らわなければ、心が死んでしまう。
私は、……彼の話を聞く事しか出来ないのかな……。
そうだとしたら、私は、……何て無力な存在なのだろう。


























「でも、アリス兄さんは違った。
 最後まで、心を殺される事なく、辛い日々を生き抜いた。
 あの人は、……闇に堕ちながらも、光を求め続けた。
 だから、物心ついた時には、病に冒されて、……でも、あの人は、
 こんな血の流れを断ち切りたいが故に、僕にその役目を託した。
 もう、自分の寿命が長くない事を悟っていたのかもしれない。
 だけど、僕は、……その期待を裏切ってしまった。」


そこまで言って、彼は、ゆっくりと瞼を閉じた。
そこからは、まるで、昔話を聞かせるかのような声色だった。























「…………ある日、僕は、悪魔の囁きに耳を傾けてしまった。
 その声は、兄さんのように優しく、そして甘く、僕に語りかけてきた。
 闇に堕ちろ、と、……そうすれば、楽になれる、と……。
 そして、僕は、躊躇いながらも、差し出された手を握ってしまった。
 それ以来、僕の身体は闇に喰われ、心も少しずつ荒んでいったよ。
 それでも、僕は、理性で、感情が喰われるのだけは何とか防いでいる。
 ……だけど、それも時間の問題だ。
 麗、君は、…………こんな僕を救ってくれるかい?」


切なげな瞳で懇願された。
本当に、心底解放を求めているようにしか見えなかった。
私は、……彼の手を取ろうと思った。
闇に堕ちた堕天使を救い出すために、……少しでも、力になりたいと思った。
< 124 / 169 >

この作品をシェア

pagetop