Turning Star
「何か、…………暗いね。」


「そうね、……陰鬱、って言葉がピッタリだわ。」




恵と藍が、思った事を口にしている。
確かに、雨が降っているわけでもないのに、空が雲に覆われている。
そのおかげで、必然的に、地上は薄暗い。




























「……確か、闇薔薇は、森の中の屋敷に住むと言っていた。
 ここから見えるのは、……一つだけだ。
 ついでに言うと、この近辺には人の気配がしない。
 どうする、……行ってみるか?」




不意に、どこかから声が聞こえた。
誰かと思い、声の聞こえた方向を見てみると、いつの間にいなくなっていたのか、
隼人は、傍の木の上に登り、高い所から辺りを窺っていた。
そして、此方に視線が向いた事に気付くと、スタンと綺麗に着地を決めた。



























「私、……あそこから、何だか禍々しい気配を感じるわ。
 たぶん、麗もいるはずよ。
 一刻も早く、行きましょう。」


「……そうだね、この辺りに建物らしい建物はないし、そうしようか。
 僕の瞬間移動は、自分が知っている所にしか移動できないから、
 …………翼、お願いできる?」



不意に声をかけられて驚いたけど、俺は、コクリと頷いた。
それにしても、いきなり名前呼びとは、なかなか大胆だなと思った。
まぁ、彼女は、サバサバした性格なのだろう。
< 138 / 169 >

この作品をシェア

pagetop