Turning Star
「ふふ、何をするつもりかは知らないけれど、無駄よ。」


再び、無数の火矢が放たれた。
何の躊躇いもなく貫こうという意志を持ったそれに、俺は、動揺した。































「藍、早く召喚してくれ。
 俺が止めていられるうちに。
 …………自由を奪え、……火矢よ、動きを止めろ。」



俺は、一か八か、吊られた男のカードを、勢いを殺さない火矢に向かって突き出した。
そして、それらに向かって、命じる。
すると、此方に届くギリギリの距離で、矢は徐々にゆっくりとした速度になり、
最後には消えてしまった。
































「なっ……。」


ティナは、唖然としていた。
そりゃあ、俺だって焦るくらいだから、当然だろう。







「藍、今だ!」


「分かったわ。
 ……清き水よ、貴方は、緩やかに流れていく。
 浮かべた物を運び、それを終えると、また次を招き寄せる。
 永遠に途切れる事なき流れは、いつまでも紡がれ続ける。
 尊き恵みを、貴方は、いつも私達にくださる。
 それを、私達は甘んじて享受しているの。
 どうか、今だけは、私達に力を貸して。
 …………水の巫女エリーナよ、我の元に来たれ。」


その言の葉は、まるで、麗の魂が宿ったかのようだった。
次の瞬間、藍の身体を纏っていた炎は、跡形もなく消え去った。
代わりに現れたのは、水によって形作られた、美しき巫女だった。
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