Turning Star
「……っ!
 これは、……一体……。」




「相手をかく乱するための措置、幻魔鏡、です。
 この術は、基本的には相手に幻覚を見せるためのものなのですが、
 それとは違い、もう1つ重大な効力があります。
 ……透視の能力を持つ者は、いささか厄介なのです。
 ……普通、従者は、その持つ属性と対極の者でなくては、倒す事は不可能です。
 私の場合は、太陽が対極に当たるのですが。
 ……しかし、例外があるのです。
 透視の能力を持つ者は、僕達の中にある核を見つけ出し、それを壊せば、
 どんな属性であろうと倒す事が出来るのですよ。
 ですが、そういう事なら、……探らせなければ良い。」




ノアールは、丁寧ながら冷たい色を持った声で、いともあっさりと、
勝機を断ち切ってしまった。
対する僕は、……無言、だ。
こんな状況で、僕に何が出来る?
実はキーカードであった、自分の能力を、こうも簡単に切り捨てられたら?

























「……もし諦めるのなら、一瞬で楽にして差し上げますよ。
 そうでなければ、……じわじわと痛ぶるのみです。
 本来は、……麗様、いや、彼女に宿る者、光の巫女シャイネ様は、
 このような所業をなさるお方ではありません。
 ですが、……どうも、ここにいる間に少し、カトリーヌの洗脳の影響を
 受けてしまったようです。
 そのおかげで、少し歪みが生じた。
 ……まぁ、当の本人は、既に戦意喪失となっているようですがね。」



そう言って、ノアールは、その細長い指でカトリーヌを指差した。
そして、静かに、次の言葉を紡いだ。












「しかし、……圧倒的な力を持つ者ほど、一度歪むと元には戻りづらい。
 貴方も、今の彼女を見れば、それがお分かりでしょう?」


小さく溜息をついて、ノアールは、そう言った。
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